PBRの計算の時に使うBPSは自己資本を使う
PBRの計算をするときに、よく「株価÷1株あたり純資産(BPS)」という式を見るが、
「そもそもBPSってどうやって計算するんだ?」という疑問をもった人は多いと思う。
答えは下記だ。
ここでポイントは決算短信の「純資産」を使うのではない、ということだ。
日本会計なら「自己資本」、IFRSなら「当社株主に帰属する持分」とか、「親会社に帰属する持分」を平均発行株数で割る。
自社株買いをしたら自己株式が増えるから平均株数は減る。
自己株式は、BPS計算の分母には入れないということだ。
上記の形で計算したBPSを計算してみてほしい。近い数字になるはずだ。
ただ、四季報は少し遅れている。
今の最新が第3四半期でも、四季報の最新刊が中間決算時点のもの、ということはあるから確かめの際には注意してほしい。
あと、四季報の計算と実際の短信で計算した数字は、計算過程の若干の違いで答えはピッタリにはならないはずだ。それは気にしなくていいだろう。監査法人でもなければ、証券アナリストでもないのだから。
四季報が「純資産÷株数(期間平均数)」で計算していないことは重要なポイントだ。
各社は有価証券報告書でも同様に「自己資本÷株数(期間平均数)」で計算した数字を発表している。
以前自己資本=純資産だったころは、PBR=株価純資産倍率という言葉はしっくりきたが、今はPBR=株価自己資本倍率の方が的を得ている。
PBR=株価株主資本倍率の方がより継続的に使用できる。
日本会計基準でも「株主資本」の項目はあるのだから、全て「株主資本」に統一しませんか?
と言いたくなる。ややこしくて仕方がない。
IFRSのキャッシュフロー計算書は税引き後当期純利益からスタートする
損益計算書P/L、貸借対照表B/S、キャッシュフロー計算書C/Fの財務三表の関係性を学んでいると、以下のような問題にぶち当たる人がいると思う。
利息や配当の記載箇所の違いは他のコラムで散見するので、ここではさらに重箱の隅を突く疑問を記載する。それは以下のようなものだ。
「日本の会計基準だと営業キャッシュフローのスタートは税引き前当期純利益なのに、IFRSだと、税引き後当期純利益なの?」
答えは、「Yes」である。
もちろん、全ての企業を網羅したわけではないが、IFRS導入企業の財務3表を見ると、営業キャッシュフローのスタート地点にあたる当期純利益の箇所に、連結損益計算書(P/L)に記載の税引き後当期純利益を記載している企業はある。
最先端のグローバル企業である大手商社など見てみてほしい。そのようになっている記号があるはずだ。
そうすると次に下記の疑問が浮かぶ。
「税引き後当期純利益から営業キャッシュフローの計算を始めると、法人税は2重に引かれるの?それとも引かないの?」
これは、日本の会計基準でキャッシュフロー計算書(C/F)を見慣れた人ほど浮かんでしまう疑問だ。
答えは、
「法人税は足し戻す」だ。
実際にIFRS企業のキャッシュフロー計算書をみてみよう。日本の会計基準なら、当たり前のように引いていた法人税の数字の上に「△」印がない。つまり、法人税を足し戻しているのだ。(ここでは法人税=法人所得税として解説している)
しかも足し戻している法人税は、損益計算書(P/L)で引かれたそれと一致しているはず。確かめてみてほしい。
これで、「IFRSのキャッシュフロー計算書、どうなってんだ?」と思っていた人の混乱が解けたのではないだろうか。
ちなみに、キャッシュフロー計算書の「現金及び現金同等物」の数値が、貸借対照表(B/S)のそれと一致しないことで混乱している人もいると思うが、それは、「有価証券報告書」でそれぞれの「現金及び現金同等物」の注釈箇所を見れば、内訳が記載されているので、数字が異なっている理由がクリアになるはずだ。
有価証券報告書をネットで出して「現金及び現金同等物」で検索をかけて、記載箇所をハイライトすれば、注釈箇所も見つけやすくなる。
もっとも、この「現金及び現金同等物が、C/FとB/Sで一致しない現象」はIFRSより、日本の会計基準の企業で見られる傾向がある。
(注)本記事は、筆者が財務学習で学んだこと経験を基に解説しているため、法令や事実と異なる内容が含まれている可能性がある。事実確認は自身で行っていただきたい。事実確認を自身で行えるように書いているつもりである。